花しょうぶは、日本の古典園芸植物の中では、珍しく、現在でもとても人気があり、その育種も継続している植物の一つです。
種の起源としては、東北地方で、野花しょうぶの色変わり品種が選抜されてから、江戸時代までの間に園芸栽培品種として確立したものと考えられており、現在では、その数、5000種を越えると言われています。
それらを、作出経緯から大きく分けると3系統に分けられ、伊勢系、肥後系、江戸系と呼ばれます。なお、最近の交配品種では、それらの系統の性質が薄れてきているものもあり、ここでは、雑種ととして分類しています。ちなみに、アメリカなど海外でも育種交配が盛んにおこなわれています。 |
●伊勢系 |
伊勢松阪の紀州藩士吉井定五郎により独自に品種改良されたという品種群で、「伊勢三品」の一つ。昭和27年(1952年)に「イセショウブ」の名称で三重県指定天然記念物となり、全国に知られるようになった。 |
●江戸系 |
江戸ではハナショウブの栽培が盛んで、江戸中期頃に初のハナショウブ園が葛飾堀切に開かれ、浮世絵にも描かれた名所となった。ここで特筆されるのは、旗本松平定朝(菖翁)。60年間にわたり300近い品種を作出し名著「花菖培養録」を残し、ハナショウブ栽培の歴史は菖翁以前と以後で区切られる。こうして江戸で完成された品種群が日本の栽培品種の基礎となった。 |
●肥後系 |
肥後熊本藩主細川斉護が、藩士を菖翁のところに弟子入りさせ、門外不出を条件に譲り受けたもので、「肥後六花」の一つ。満月会によって現在まで栽培・改良が続けられている。菖翁との約束であった門外不出という会則を厳守してきたが、大正時代にこれを売りに出した会員がおり、瞬く間に中心的な存在となった。 |