悠久の時を超えて発見された
クマノザクラ

 「紀伊半島で新しい桜の野生種が発見される」という言葉が新聞や雑誌の見出しを賑せたのは2018年3月のこと。
 このニュースを知って業界の有識者、庭木や桜に詳しい趣味家が驚き、悠久の浪漫に心を奪われました。
 春になれば満開の桜の下で宴を開き、淡いピンク色を桜色と呼び、美しいピンク色のエビを桜エビ、貝を桜貝と呼ぶ。園芸植物においてもたくさんの種類があえて「さくら」という名前をつけられているほど、桜は日本人の心に深く根付いた植物です。
 桜は昔から人の手によって幾度も育種交配が行われており、現在でも100種類以上が流通しています。
 ところが、その野生種(昔から日本に自生していてその誕生に人の手が関わっていない桜)は、クマノザクラを除いてたったの9種。しかも、この9種類目の学名が発表されたのは今から100年以上も前のことです。
 9種類目が発表されて以来、日本ではもう新しい野生種が発見されることはないとさえ思われていました。それだけにこの10種類目(※) の「クマノザクラ」の学名が発表されたという事実は日本中の桜に関わる人々にとってとても意味があり、100年間の空白の時間に悠久の浪漫を感じてしまいます。
 それでは、100年の時を超えて発表された「クマノザクラ」を存分にお楽しみください。

 ※カンヒザクラを日本の野生種としてカウントした場合、全部で11種類になります。

熊野桜(くまのざくら)

熊野桜(くまのざくら)|クマノザクラのご予約を受付いたします。


熊野桜(くまのざくら)|クマノザクラのご予約を受付いたします。

クマノザクラの販売をスタートいたします。|熊野桜(くまのざくら)|クマノザクラのお届けは花の音で


クマノザクラの販売をスタートいたします。|熊野桜(くまのざくら)|クマノザクラのお届けは花の音で


新しい野生種発見の意義

 植物の育種開発の基本は、既存の種類を掛け合わせて有益な性質をその子に発現させることから始まります。
 そこから誕生した個体を性質ごとに分類し優劣をつけて選抜していきます。これを、繰り返しその性質に磨きをかけていくわけですが、これまでの9種の野生種からたくさんの栽培品種が誕生したことを鑑みると、そこに新しくクマノザクラが加われば、今後、新たな栽培品種が誕生してくることは容易に想像ができます。
 日本で人の手によって最も植えられているサクラと言えば‘染井吉野’ですが、江戸時代末期に作出されたこの栽培品種は、てんぐ巣病にかかりやすいことや高齢木の管理に人手や費用がかかることが明らかとなっています。それに代わる新しい品種が望まれていることも事実です。

クマノザクラ

学名:Cerasus kumanoensis T.katsuki 
英名:Kumano cherry

熊野桜(くまのざくら)|三重県産クマノザクラの親株です。このクマノザクラの樹形は大変美しく、現在把握しているクマノザクラでは最高の美しさです。

熊野桜(くまのざくら)|三重県産クマノザクラの親株です。このクマノザクラの樹形は大変美しく、現在把握しているクマノザクラでは最高の美しさです。 ・枝が細く柔らかい樹形はとてもやさしい雰囲気を持っている。
・開花時期が早く、自生地では早い個体で2月中旬ごろから咲き始め、3月中旬から下旬にかけて見頃となる。
・葉が開くよりも先に花が咲く。
・樹高は比較的低く、森林の中では15m程度、単木だと8m程度に成長する。
・自生地では単木よりも株立ちが多く見られる。
・花色は白〜淡紅色、まれにフレアが入る。
・比較的暑さに強い。

どうして今まで
見つからなかったのか

クマノザクラは自生地では昔から親しまれていました。写真は道端に生えているクマノザクラです。熊野桜(くまのざくら)

クマノザクラは自生地では昔から親しまれていました。写真は道端に生えているクマノザクラです。熊野桜(くまのざくら)  クマノザクラは、紀伊半島南部、熊野川流域を中心におよそ南北90km、東西60kmの限られた範囲に自生しています。特に山間部の崖など比較的痩せた土地に多く見られますが、熊野市周辺では個人が所有する畑や雑木林、道路際などでも見かけます。
 クマノザクラはこれらの地域では昔から生活に密着しており「この辺のヤマザクラは二回咲く(※)」と言われていたほどで、あまりに身近すぎてそれが未発見の桜であることに気付くことが出来なかったというわけです。
 クマノザクラは100年をはるかに超える昔から当たり前のように親しまれてきた桜なのです。
 ※クマノザクラは開花時期がヤマザクラよりも早いため。

クマノザクラ減少の危機

 クマノザクラは二次林によく見られます。二次林とは人間が利用して更地になったあと、自然に再生してできた森林ですが、最終的にシイノキなどの常緑広葉樹が主体となる「極相林」と呼ばれる森林へと遷移します。
 その遷移の中でクマノザクラをそのまま放置すると最終的には淘汰され消滅してしまいます。
 1950年代、日本では燃料革命がおこり、石炭や木炭などの燃料から石油にかわりました。その影響で森林の伐採が減少し、新たに形成される二次林がほとんどなくなってしまいました。
 このような状況下では、現在、自生しているクマノザクラが、今後、淘汰され減少の道をたどった時に、新たに生育場所である二次林がほとんどない状況は危機的と言えます。

クマノザクラの増殖

 日本樹木医会三重県支部に所属する中村樹木医⧉(木楽Nakamura代表)は、クマノザクラの発見者である勝木俊雄博士(森林総合研究所チーム長)の指導の下、分布調査から得られた個体情報をもとに種子採取用の母樹を選定し実生苗の増殖を行うと同時に、優良な個体を保存するために接ぎ木増殖を行っています。
 このように増殖された苗木は、クマノザクラを保存する目的で自生地に植栽されたり、将来に向けた優良個体による種子や接ぎ穂の採取園を作るために活用され始めています。この取り組みは、地域の観光資源としてはもちろん、これからの日本人の心(桜)の未来の担い手として注目を集めています。

交雑の危険

 桜は雑種を作りやすい樹木で、異なる種類のサクラと交配しやすい性質を持っています。現地では自生するヤマザクラとの雑種が良く見られますが、特にダムや滝などの山中奥深くまで植栽されている‘染井吉野’による雑種形成が懸念されています。これは遺伝子汚染といって純粋なクマノザクラの生存を脅かす大きな問題となっています。これらの影響を受け、雑種が多く混ざっている種子で増殖された苗を自生地内に植栽することは、かえって純粋なクマノザクラの生存を脅かすことになってしまいます。人里や近くに‘染井吉野’などの栽培品種のあるクマノザクラから採取した種子を安易に人に配ったり販売しないよう注意してください。

クマノザクラを守り伝えていく

熊野桜(くまのざくら)|クマノザクラの増殖の様子です。三重県産クマノザクラの親木は、大変樹形が美しい株です。

熊野桜(くまのざくら)|クマノザクラの増殖の様子です。三重県産クマノザクラの親木は、大変樹形が美しい株です。  赤塚植物園では、クマノザクラの保存と広く世間に紹介することを目的として、勝木博士の指導の下、中村氏⧉が実生増殖を行った三重県産のクマノザクラの販売をスタートいたしました。
 紀伊半島南部ではるか昔から慣れ親しまれてきたこの野生の桜を、貴重な種として絶やすことがないよう努めてまいります。


クマノザクラの種を保全してSDGsの達成に貢献します。

information

 ■クマノザクラの苗を購入して育ててみたい方に..

 ■クマノザクラの苗を購入したい方に..


 クマノザクラは、期間を限定して以下の店舗で販売予定です。購入をご希望の方は下のボタンからそれぞれのHPで詳細をご確認ください。



 ■クマノザクラをもっと知りたい方に..

 ■クマノザクラをもっと知りたい方に..


クマノザクラ写真集


 この度のホームページ制作にあたり、勝木俊雄博士(森林総合研究所チーム長)、ならびに中村樹木医⧉(木楽Nakamura代表)にたくさんのご協力を頂戴いたしましたこと、また、クマノザクラとの貴重なご縁を頂戴しましたことに深く感謝いたします。
 なお、この苗木の売上の一部は、クマノザクラの研究と保全の活動に役立てさせていただきます。

株式会社 赤塚植物園 



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